私を ねぇ 狂わせて?


 狂うほど 壊れるほど 人を 愛してみたいから。


壊滅的狂愛 。


「いい加減振り向いてくれてもええと思うねんけどなぁ…。」
 ぽりぽりと頭をかいて 独り小さく呟いた。なかなか 恋愛というのは難しいものやねと 今更ながらに思った。

 自分が振り返りもせずに 振り返ってくれることを求む。
 そんな独り善がりな矛盾には気付いてはいても 自分が振り返る事はなかなか難しい。



 市丸も 松本も 決してモテない方ではない。
 けれども 二人に今まで‘恋人’が出来た事はない。



「悪いねぇ…ホンマ。どうしても離れられん人がおんねん。」
「ごめんなさいね。どうしても離れられない人が居るの。」



 それが いつもの断り方。


 好きな人が居る とは言わない。
 恋人が居る などとは余計言わない。




 “離れられない” のだ。




 そう それはまるで呪いのように


 いつか想いが砕けるかもしれない 好きな人でもない。
 いつか想いが離れるかもしれない 恋人でもない。



 そう それはまるで


 呪いのように。


 “離れられない”。






「側には 居るんやけど。」

「存在には 気付いてるくせに。」

両者とも
振り返らない。





背中合わせの 愛。















「「愛の為に 貴方は何処までできますか。」」


「…なんだ それは。」
 唐突な松本の質問に 日番谷の皺を深くさせた。

「雑誌か何かに載っていた質問。どうです 隊長は?」





「…何ですか それは。」
 そんな事より仕事してください と 吉良は呆れた顔をしたが 市丸は満面の笑みで答えた。


「何かに載ってた質問。どうよ イヅルは?」





 彼等は はぁ と小さな溜息を付いて答えた。





「「何処まででも。」」





「真っ直ぐですねぇ。」
「真っ直ぐやねぇ。」




「オマエはどうなんだよ?」
「市丸隊長はどうなんですか?」




 そう切り返された質問に 苦笑を見せた。






「「狂う所まで。」」






 狂うほど愛すのが
 唯一の愛情表現。

 それより上はない。
 それより下もない。

 そう それは

壊滅的狂愛 。