僕達は
その寂しげな瞳に
その寂しげな背中に
反対を向きながら 追い縋ろうとしていたんだ。
「ギン…?」
乱菊が掠れた声を出したのが耳に届いて ギンは微笑みながら振り返った。
「ん?」
暗闇で互いの顔すら良く見えない。
「ギン」
乱菊は再度呼びかけた。その場に居るかどうか確認するかのように。
そっと 頬に彼の冷たい指が触れる。
真っ暗な中 そう 手探りで見付けたキミは
闇に溶けて ボクの指からこぼれ落ちたんだ。
出会った時から 気付いていた。血の臭いがしたもの。
今も分かってる。血の臭いがするもの。
それでも それでも
あなたがアタシを貴方に縛り付けるから
アタシは どうしようもなくなってしまうの。
欲しい と 思った。
「此処に居るよ。」
キミの体が欲しいわけじゃない。
「冷 たい。くすぐったいじゃない。」
「んー?乱菊のほっぺプニプニしてて気持ち良いんよ」
キミの心が欲しいわけでもない。
そっとキミの頭をこちらへ引き寄せて 深い深い接吻をする。
キミの 愛が 欲しい。
嗚呼 嗚呼 出来るのならば 出来るのならば
忘れさせて
貴男を 貴女を 私を 自分を。
貴方を忘れる事が出来たならば
彼方まで飛んでゆけるのに
嗚呼 貴方が縛り付ける。
「ギンの頬は 固いよ?」
「知ってる?頬が柔らかい人てな エロいねんて。」
「それ 絶対逆でしょ?」
二人でいるときしか 名前で呼べないような臆病者で
貴方が居ないと生きていけないような 臆病者で。
嗚呼 僕らはもう交わる事は無いのだろう
嗚呼 きっと私はもう 貴方の背中を見ることすら出来ないのでしょう。
愛しい人よ
愛しい人よ
「ギン」
「此処に居るよ」
「ずっと?」
「うん 此処に居る。」
「何処にも行かないでよ?」
「うん。此処に 居る。」
知っているくせに。
彼がこういう時は 居なくなってしまうと。
なのに なのに
私はいつも 安心して目を閉じてしまう。
嗚呼 愛しい人よ
目が覚めたら 貴方が側に居ればいいのに。
目が覚めて 貴方が側に居るならば
それだけで 良いのに。
神様 神様 何故私をお見捨てになったのですか?
エリ エリ レマ サバクタニ。
エロイ エロイ レマ サバクタニ。
+戻+
::後書::
エリ エリ レマ サバクタニ
エロイ エロイ レマ サバクタニ
『神様 神様 何故私をお見捨てになったのですか』