「それでね 藍染隊長がね。」
その台詞が 何度吐かれた事だろう。
その度に 俺は何度興味が無いような返事を返しただろう。
今 俺は どんな顔してる?
「あー。……ん。……へぇ。」
書類に目を通しながら適当な相づちを打つ。
わざわざ 隊長室に来てまで そんな報告しなくったって良いのにと 思わずにはいられない。
来るなら 俺のことを 話せよ。
俺は ちゃんと ‘どうでも良さそうな顔’が出来ているだろうか?
大して内容が頭に入っていない書類に サラサラとサインを入れる。
「そりゃぁ 良かったな。」
えへへっ と雛森が笑う。
君は 知らないだろう。
君が何気なく 口にする言葉
君が何気なく する行動
その一つ一つが 俺の心をえぐり取っては 癒して行くことを。
「日番谷君っ!」
「あぁ?何だよ?」
めんどくさそうに顔を上げると 雛森が満面の笑みでこちらを見ている。
「やっと 顔上げてくれたっ!」
「はぁ?」
裏返った 素っ頓狂な声が出る。
雛森は ニコニコと笑い続ける。
君は 知らないだろう。
今日 君が俺の名前を紡いだ回数が 彼奴の名前を紡いだ回数より
多いだ 少ないだで
一つ 喜んで 一つ 憂う俺の 感情なんて。
「わっ もうこんな時間だっ!行かないと…。」
時計を見て一人慌てて 立ち上がる。
「それじゃぁ またね 日番谷君。」
其れを再会の約束ととるのは間違いなのだろうけども。
君の笑顔が 脳裏から離れない。
「ばっ…ば か やろォ…。」
急に体温が上昇してくるのが分かる。
君は 知らなくていい。
俺の こんな醜い感情なんて。
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