::注意::
★数年後の日雛です★
★日番谷君の方が身長が高いです★
★なんか知らないけれど(笑)微妙にエロいです★
ご理解いただけない方はご退出をお願い致します。
大変申し訳御座いませんが 苦情にはお応えいたしませんことを 此処に明記します。
※この小説の内容考案は鬼剣犬矢様です※
言の葉に乗せて。 |
体を重ねる。
…というと 生々しいように聞こえるけれども ともかく二人がそういう関係になってから暫く経っていた。
正直な話 初めての時は嬉しかった。
大人になったような気はしたし 何より日番谷と更に深い絆で結ばれたような気がしたから。
(なのに)
少し惨めな気分になりながら 雛森は明日提出期限の書類の 空白の判子覧を見て溜息をついた。
十番隊長判子必須と書かれたその書類を恨めしく思いながら 濡れた髪を後ろに流して雛森は立ち上がった。
これは仕事。そう心に言い聞かせて 重い足を彼の寝室へと向かわせた。
部屋には光がついていた。本当のことを言えば お風呂にでも入っていて部屋を空けては居ないかと 少し期待していたのに…。そう内心毒づいた。
そうすれば書類を置いていけるし 彼と顔を合わせなくても済むのに。
扉の前に立ち すこし躊躇ってから雛森は声を出した。
「日番谷君?」
扉越しに霊圧がかすかに動くのを感じた。
「入れ。」
何時もどおりの声に安堵と同時に不安を感じながら そろそろと雛森は扉を開けた。
少し意外そうな顔をしている日番谷に勘違いされる前にと 雛森はずいと書類を突きつけた。
「これ!明日までなの!」
日番谷は少しきょとんとした顔をして ああ と曖昧な相槌を打ってその突き出された書類を受け取った。
「……なぁ。」
暫くの沈黙の後 日番谷は少し低めの声で呟いた。
え?と雛森が戸惑っている間に 日番谷は立ち上がって雛森の傍まで寄ってきた。
大きくなった背は それだけで威圧感があった。
「……シて 良いだろ?」
耳元で囁かれる バスの声。
背筋を何かが這い上がるような ゾクゾクとした感覚に 腰が抜けそうになった。
(駄目)
雛森は そう自分を叱責した。ここで流されてはいけない と。
(何のために)
日番谷の 大きくてゴツゴツとした手が雛森の髪を掻き上げた。
(何のために、あたしは)
雛森は 掠れる声を絞り出した。
「ま 待って…ッ!」
日番谷の唇が雛森の首筋に近づいた時 雛森はぐっと腕に力を入れて日番谷の胸板を押し返した。
其処まで力を入れずとも その胸板は自然に離れた。
きょとんとした顔の日番谷と目が合った。
「………。」
不思議そうな日番谷の真っ直ぐな目に耐えきれなくなって 雛森は目線を下に落とした。
妙な沈黙が10秒程続いたが 耐えきれなくなったのは沈黙を作り出した雛森の方だった。
「…やだ」
「あ?」
日番谷の声は 未だ少し何時もより高かった。
それに少しだけ安堵したのだろうか 雛森の口から落ちた音は 掠れながらも言葉になった。
「こうゆう…こと もう…したく…ない。」
目線を下に落とした雛森が 険しくなった日番谷の顔を見ることは無かったが 少しだけ霊圧が強くなったことは感じた。
微かに指先が震えはじめた。
「…何で?」
ぐっと 日番谷の声が低くなった。
そこになって初めて ふつふつと雛森の中に悔しさが湧いてきた。
下唇を噛み締めると 酷く鈍い痛みが其処を中心に広がっていった。
「…だって。」
日番谷は立ったまま動かずに じっと雛森を見つめ続けていた。
その視線に気付きながらも 雛森は目線を彼と合わせようとはしなかった。
想いを言葉にする勇気を得ようと 強く 畳の目を睨みつけた。
「誰 でもいいんで…しょっ…?あたしじゃなくても…」
徐々に強くなっていく声を感じながらも 雛森にそれを抑えるだけの理性は残ってはいなかった。
日番谷も それをただ淡々と聴いていた。
まるで汚いものでも吐き出すかのように 憎悪が沸き上がってきた。
なんで なんで なんで。
「こういうこと出来れば 誰でもいいんでしょうっ?!」
言い切った途端 燃えた心の炎を消すかのように 哀しい感情が降り始めた。
自分が情け無いのか それともその事実が哀しいのか 雛森にはよく分からなかった。
(…あたしは 日番谷君じゃなきゃ 駄目なのに)
黙って去っていってくれればいいと思った。
もしかすると心の何処かしらで 慰めの言葉を期待していたのかもしれなかった。
けれども 日番谷は濡れた雛森の心に容赦なく重い鉛のナイフを突き立てた。
「…誰でもいい、だと?」
日番谷の喉から発せられたのは 普段の色のある低さとは違う 脳を揺さぶる音波のような低音だった。
その声と同時に唐突に解放された霊圧に雛森の両膝は耐えきれず ガクンと雛森はバランスを崩した。
その彼女の両腕を掴み上げて 日番谷は雛森を壁に押しつけた。
「は…離し…」
その時 初めて雛森は日番谷の目を正面から見た。
思えば 日番谷が雛森の身長を抜かして随分経ったせいだろうか。
本当の真正面から日番谷の目を見る回数が少なくなっていた気がする。
見下ろしていた彼の目でもなく 見上げていた彼の目でもなかった。
雛森の声が揺れているのは恐怖からだった。
「ふざけんなよ テメェ。」
日番谷自身 自分のその声と霊圧が怒りからなのかどうか理解していなかった。
少なくとも 今の彼の五割近くは怒りが支配しているのは確かだろうが ただ 沸き上がったものを吐き出すばかりだった。
ぐっと 彼女の腕を壁に押さえつけている手に力を入れた。
「痛ッ…!」
びくんと雛森は反応して顔を顰めた。
小さい頃にはいくら訓練をしても限界があった「力」そのものも 昔とは比べようのない程になっていることを 頭の隅の方で感じた。
すっと日番谷は急に力を抜いて雛森の手を解放した。
雛森は 少し紅くなった両腕をさすりながら きょとんとした顔をした。
日番谷は雛森に一度背を向けて扉を開いてから 彼女を振り返った。
「帰れよ。望み通り 他の女を抱いてやるぜ。」
雛森は 一度目を見開いてから 眉尻を下げて泣き出しそうな顔をした。
「やっ…ひつ…」
「触ンな。」
ピシャリと言われた台詞に 雛森は日番谷に触れようと伸ばした手をピタリと止めた。
腕の紅くなった部分が 今更ながらに鈍い痛みを伝えた。
殆ど日番谷の頭に思考など無かった。
彼の頭を支配しているのは ただ 怒りと 悔しさと そして
…悲しみと だけだった。
「それ以上近づいたら 本気で犯すぞ。」
吐き捨てたその台詞に ぼろり と 雛森は大粒の涙を落とした。
「ごめ…な…さい…。」
かくんと力無く雛森はしゃがみ込んで日番谷を見上げた。
震えた細い手が 日番谷の裾を掴んだ。
「行っちゃ…やだ…ぁ…。」
宝石を落とし続ける上目の雛森を見下ろしながら 日番谷は少しだけ上擦った声で応えた。
「お前が言ったんだろ。」
そう言いながらも 日番谷は後ろで扉を閉じた。
「ごめんなさ…っ…言わない から…もう言わないから…!だか…ら 行かない でぇっ…!」
はぁ と態とらしく溜息をついて 雛森と視線を同じ高さにするために日番谷はしゃがみこんだ。
「…ったく、泣くほど嫌だったなら何であんな事言ったンだよ…。」
ひっく と鼻を啜ってから 雛森は涙を擦りながら答えた。
「だ だって…。ひ 日番谷く… 何も、言ってくれないんだもんっ…!」
そう言われて 日番谷は少し意外そうな顔をした。
(何も?)
一体何を言えば良かったのだろうか。
一体何を言わなかったのだろうか。
その疑問は 続いた雛森の台詞がすぐさま解決してくれた。
「私ばっかりが好きなんじゃないかって…か、からだだけが…必要なのかなぁって…。」
少しばかり力の入っていた肩を 日番谷はすとんと落とした。
何だそんな事か。
そう言おうかとも思ったが 彼女にとってそれがどれだけ重要だったのかは先の発言が示している通りだから 話をややこしくするのは止めようと言葉にはしなかった。
「…ばーか。…言わなくても 分かるだろ…。」
そう少しだけ苦く笑いながら 日番谷は雛森の濡れた頭をくしゃくしゃと撫でた。
雛森はそれから逃れるように頭を振って 未だ涙を流し続ける目で日番谷を睨みつけた。
「分かんないよ!言ってくれなきゃ、何も分かんないもんっ!」
必死にそう枯れ気味の喉で訴える雛森の頬を伝う 雫とも涙ともつかない其れを舐めとると 雛森はぴたりと口を閉じた。
「…分かったから…ちゃんと言うから。」
顔を寄せたまま 耳元で囁くようにして日番谷は続けた。
「…だから 泣くなよ。」
真面目に言うつもりだった台詞は 今更のように真っ赤になった雛森を見たせいで 少し声が震えて冗談のようになってしまった。
「…っ…。」
先を促すようにこちらを見る雛森に 日番谷はにやりと笑ってみせた。
「ただし 俺の愛の台詞は高いぜ?」
「…へ?」
少し間を空けて 雛森はさぁっと顔を蒼くしたが 抵抗するにはほんの少し遅かった。
組み敷かれた雛森は また顔をまるで初めての時かのように紅くした。
「ひ ひつがや…」
「その分 めいいっぱい喘いでもらわないとな?」
近づいたら犯すって言っただろ?そう囁かれて 雛森は観念したようにぎゅっと両目を瞑った。
それを見て笑う日番谷の声にまた頬を紅くした。
そっと 手を滑り込ませると 日番谷の手と雛森の体温の差を酷く感じた。
冷たい手にその熱い場所は柔らかな痛みのように感じた。
「な 目ェ…開いて?」
優しげな低音に逆らえる筈もなく おずおずと雛森は真っ赤な頬のまま目を開けた。
其れを愛おしげに見つめてから 日番谷は唇を落とした。
「愛してるよ。…お前だけを。」
ちょっとだけ紅くなった日番谷の頬に触れて 雛森は今だといわんばかりにクスクスと笑ってみせた。
+戻+
鬼剣犬矢様主催「日番谷大人祭in日雛」への投稿作品