211.イヤイヤ

「イヤー!イヤイヤー!!」

 じたばたと手足をばたつかせ、雛森は全身で拒絶を示した。

「いやなの!イヤー!!」

 日番谷は頭痛を抑えて、雛森を睨みつけた。
 びくっ、と雛森は怯えた後に、泣きそうな顔で仁王立ちしている日番谷を見上げた。

「いや…なの」

 潤んだ瞳に負けそうになったが、必死に押し留めて眉間に皺をつくる。

「少し血ィ取るだけだっつってんだろう!今更注射ぐらいでガタガタ云うな!」

「やだーーーーー!!!!!」

 ほほえましい、日曜日の朝のこと。


212.新しい仲間

「と、いうことで、しろーくんでーっす!」

 満面の笑みで、雛森はそのクマの手を動かした。
 今までのコレクションと相も変わらず、無愛想な、目つきの悪い人形。

「なかよくしてね、冬獅郎君っ」

 クマの手で頭を撫でられた日番谷は、最早抵抗する気も失せて、はぁ、と小さく溜息をついた。
 白うさぎ、白ねこ、そして今日、雛森の部屋の「楽しい愉快な仲間達」に新しい仲間が加わった。

 真っ白い、目つきの悪いクマが。


213.アクシデント

 あっちゃあ、と雛森は思わず目を覆った。
 日番谷の眉間の皺が、数倍にまで増えたように見える。
 雫をたらす花が揺れながら、莫迦ねえと言っている気がした。

「え…えへ。」

 必死の誤魔化しに、日番谷はどことなく諦めのついた目で睨んできた。

「相当、俺に怒られたいらしいな。」

 濡れた二人と、雛森の手に握られたホースが、日番谷の怒りの意味をありありと表していた。


214.冷

 温かいものは好きだ。其れは生を感じさせてくれるから。
 冷たいものは好きだ。其れは静を感じさせてくれるから。

 ぬるりと温かい水溜りに手をついて、雛森はその男の冷たい頬を撫ぜた。

 ぬくもりなど解らなければ良いと、本気で思った。


215.キライ

「嫌い」

 ぽろぽろとなきながら、幼い君は首をひっきりなしに振った。

「そんなこと云うシロちゃんなんて、だいっきらい。」

 俺は何も云えず、うつむいていた。
 三年前、君と二人で雨の日に拾った其の猫は、彼女の手の中で、冷たくなっていた。










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