306.相思相愛

 大好きな人が
 自分を想っているという

 忘れがちな、奇跡

 今一度
 心から抱きしめて。


307.飽和状態

 器はもう満杯で
 表面張力だけで保っている其れ

 揺らせば膜は剥がれ
 どろりと溢れ出す

 其れを指で掬って舐めとる

 甘い甘い
 愛という名のシロップを


308.謎

 謎、謎、謎。

 一世一代のその謎を解こうと
 人々はずっと走り回っている。

 それなのにあのひとは
 幼い幼いあのひとは

 解いてはいけない謎を解く


 なんで、生きるの?



 死ぬためだろ。


309.女帝

 薄いドレスの上に分厚いコートを羽織って、冬のコンクリートをヒールの先で打ち鳴らす。

 聞えますかこの音が?
 憎しみ纏ったこの音が?

 静かな静かな、復讐劇。


310.予告者

 きっと気付いていた。
 それは予言ではない。予告であると。

 オ前ハ 不幸ニ ナルヨ

 にやりと笑った彼の顔を、未だ鮮明に覚えている。
 まさにその通りになた。子供じみた恋愛から一線を隔した其れにおぼれ、死になくなるときもあるほど苦しんだ。

 そして、

 死にたくなるほどの幸せを、手に入れた。










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