「時間が止まればいいのに。」

 永久の美は 不変は 永遠は 女の最終の望みで。

 何からその話になったのかはもう思い出せないが そんな話を聞き流しながら日番谷は興味なさげに茶葉を選んでいた。

「…消えるから綺麗とか そんなロマンチストな事は思わねぇけど」

 その言葉の流れのように自然に現世から持ち帰った茶葉入れのラベルを見て ええと三杯かと日番谷は小さく独り言を言った。
 ソファーに座った雛森が少し身体を捻るようにして 背もたれの方から顔を覗かせた。

「…永遠だから綺麗 とも思わねェな。」
 煎れ終わるまでの時間を持て余して 日番谷は壁にもたれ掛かり手を組んだ。

「ちょっと意外かも。」
 そう雛森の呟いた言葉に眉尻を上げて反応はしたが 言及するのはやめておいた。


 永遠がもしも存在するのならば

 俺はきっと お前に不幸が降りかからないのだと安堵して

 お前との思い出を記憶する事を止めるのだろう。


 特に話す事もなく 妙な沈黙の時間が何分か過ぎて 煎れ終わった茶を湯飲みに移した。
 片方を自分の口にやりながら もう一つを雛森にズイと差し出すと 有難うと小さく言って彼女は受け取った。



 そうしたら 俺は



 存在する意味を 失うのだろう。



「…それに お前。」
 唐突に再開された会話の接続詞は何処に繋がっているのかもよく分からないものだったが 雛森は聞いているよという意味でこくりと頷いた。

「今時間が止まったら 顔も体型もそのままだぞ?」
「…日番谷君セクハラ。」

 どういう意味よ と態とらしく眉を顰める彼女に 笑いながら日番谷はそのまま と答えた。

「俺は嫌だなー。」
「何よっ!いいもん すっごい美人になってやる!」
「…諦めろ。」
「えっ 何それ日番谷君酷ーいっ!」

 頬を一杯に膨らませて怒る彼女を見てもう一度目を細めて日番谷は笑んだ。



 過去にも未来にも今にも

 永遠にも。

 縛られたくない
 捕らわれたくない。

 俺を縛り捕らえるのは


 此奴だけで 十分なのだから。 


















::後書::

当サイトの日番谷観凝縮。