*未来設定にて 苦手な方はバック*
懐かしい香りのする場所に 雛森は立っていた。
変わった景色の中に 変わらないものがある。嗚呼 あの木がまだある。あれ あの瓦 流石に修理したんだ…。
そんな差を見つけながら雛森はくすぐったそうに笑った。
ここを出て もう百年以上程経った。早いものだとやはり思ってしまう。
「桃ねぇちゃんだーっ!」
元気の良い声に ぱっとそちらに顔を向けると ぱたぱたと幼い子供が走ってくる。
なかなか顔は出せないのだけれども 覚えてくれる子は覚えてくれるらしい。この子は確か と 思って顔を上げると懐かしい顔の男が立っていた。
「よっ 久しぶり桃姐さん。」
にっと笑う彼に にこりと笑いかけた。
彼ともよくはしゃぎ回ったものだと思うと懐かしくて仕方がなかった。
彼の子供ももうこんなに大きくなっているのだ。やっぱり何度考えても早い。
「お土産 ありがとな。何か返したいけど…」
「えっ い いいよ!そんなの…。」
現世で見つけた安物だもの と笑うと すまなさそうに彼は苦笑いをした。
「そうそう 姐さん…シロは?」
今日は来ねぇの?と首をかしげる彼に 雛森はふわりと笑ってから遠くを見た。
「…シロちゃんは…彼方に行っちゃったよ…」
ぼそりと呟かれた暗い声に 男はぎくりとした顔をして顔をしかめた。
「も…桃姐さん…それって−…」
彼が顔をゆがめたその時 ばっと雛森は勢いよく顔の方向を変えて満面の笑顔で叫んだ。
「日番谷君ッ!」
は?と男が言えば何時の間にやら其処には日番谷が腕を組みながらぼーっとした顔で立っている。
何時から居たんだ と 思わず首をひねった。
「よォ。久しぶりだな。」
「えっ え…」
にこやかに一言二言会話を交わす二人を唖然とした表情で見つめて 男は口を開いた。
「桃姐さん どーゆー…」
雛森はきょとんとした顔をしてから 嗚呼と呟いてふわりと笑った。
男は昔からよく笑う少女ではあったが 今日は得に良く笑うなと心の隅で思った。
「ああ あのね 大人になって…『日番谷君』になって シロちゃんって呼んでたシロちゃんじゃなくなっちゃったから…」
照れながら だから シロちゃんは彼方に行っちゃったの と呟く雛森を見ながら そんなややこしい台詞を吐くなと内心呟いたがさすがに口には出さなかった。
「それに シロちゃんは弟だったけど…日番谷君…ううん とーしろーは」
たどたどしいその呼び名に きょとんと男は雛森に目をやった。
雛森はぽっと それこそ桃色に頬を染めて日番谷の裾をぐいと引いた。それに日番谷は反応して 二ィッと笑うと 雛森の肩を抱えた。
「あたしの 旦那さんだから」
そういう事だから。
まさかと思うほど身長の伸びた日番谷を 男はぽかんとした表情で見つめた。
一度深呼吸をしてから 再び大きく息を吸い込み…そして 男は声を出した。
「えええええええ?!!」
彼等が村を出て およそ百年が経とうとした頃の話。
+戻+
::後書::
…ええと…と とりあえずスミマセン…(死
スランプ真っ只中に試行錯誤で作られた作品。
お題に首をひねっていたら 何故だかこんなのが出来上がりました。
シリアスを書こうとしていた気がするのに…。