成る程 確かにその戦い方は美麗な踊りと称されるのに相応しかった。
月光りを受けた銀髪が煌めき 氷は其れによって輝き 柄に付いた鎖の先にある三日月もまた 感嘆の溜息でも出る程美しく程に揺らめいた。
踊る
踊る
紅が 踊る。
大紅蓮地獄と あの世の地獄
「地獄を二度体験するなんて 滅多な事じゃ出来ないぜ。…おめでとう だな ゲス野郎」
タンと 軽い音を立てて上へと飛び 簡単に虚の面を割った。
日番谷の足が地についた途端に 遅れて雨のように降り注ぐ血と 断末魔。
扉から現れた手が いつものようにその魂を地獄へと引きずり込んでいった。
じっと。
ただ真っ直ぐとその一連の動きを見守っていたが 扉が閉まり全てが消えた途端に かくん と 途端に日番谷の肩が力を失って 重力のままに下がった。
踊る
踊る
紅が 踊る。
血が まるで踊るかのように何時も降り注ぐ。
真っ赤になった羽織と足袋。
擦っても擦っても伸びるだけの頬に付いた血。
ぞっとする程の悲しみが全身を襲った。
重い
酷く 重い。
けれども俺達に 膝をつくことは許されていない。
だから俺は 前だけをただ見据え 前にだけ進む。
だから紅は 踊り続ける。
悲しみに 影を落として。
莫迦桃みたいに 声を上げて泣ければいいのに。
泣きわめければいいのに。
そう思っても いくら頑張っても涙など出てこない事を知っているから 努力する事すらも諦めた。
虚が消える瞬間に見せた己の友人の顔が、脳裏に現れては消え 現れては消えた。
+戻+
::後書::
かなり難しいお題でした…悩みまくった。(笑)