キラキラと星空は輝いて
 僕らに叫ぶ

 其処に居ろ、と

 其処で見ていろ、と。

 だから僕は空を見上げたまま、動けずに、ここで一人立っている。



「日番谷君?」

 聞き慣れた声で名を呼ばれ、日番谷は呪縛から解かれたかのようにゆっくりと振り返った。
 彼の顔にあった驚きの表情に、雛森はきょとんとした顔をした。

「こんな夜に、どうしたの?冷えるよ。」

 風邪引いちゃ大変でしょう、と云う彼女の年上ぶった口調は昔と何ら変わりなかった。
 こんな些細な事で感極まって泣き出しそうになっているコトが可笑しくて、日番谷は苦笑した。

「凄い星の数だねぇ。」

 雛森は一人言葉を続けた。
 優しい声は空へと吸い込まれていった。
 息を吐く毎に現れる白い煙は、天に昇る事すら無く溶けてゆく。

(駄目だ)

 零れてしまいそうな気持ちを、押しとどめる。その事がどれだけ大変なのか改めて自覚した。
 見せてはいけない気持ち。
 知られてはいけない気持ち。

 流れてしまえ。
 大海原の底に沈んでしまえ。

 燃えてしまえ。
 灰となって、風に運ばれ消えてしまえ。

(駄目だ、駄目だ)

 繰り返し自分を押さえつけようとする日番谷に気付いているのか気付いていないのか、雛森はお構いなしというように歌うような言葉を紡ぎ続けた。

「あの頃も見たよね。懐かしいなぁ。こうやって、二人で。」

 ズキン、と、心臓の奥底が痛んだ。
 何かに締め付けられるような、苦しさを覚えた。

「明日も、明後日も、こんな日が続けばいいね」

 何気ないそのセリフを、日番谷は聞き流す事が出来なかった。

(明日も、明後日も?)


 そんなの、耐えられない。


 白いベールに包んでいた気持ち。

 見せてはいけない。
 気付かれてはいけない。

 必死になって隠している、その気持ちが透けている事にも気が付かずに。

「そう、だな」

 裏返った声で、そう応えた。












::後書::

SSSしか描けなくなってかなり焦っている精神で書いた一品。
かなり四六時中ヤバい精神状態だった時に書いた品でもあったり…。(汗)