いくら追いかけても
いくら追いかけ合っていても
いつまでたっても すれ違い。
「松本 コレ。」
はぁい とやる気の無い返事を返した後 松本は日番谷が指さした書類の束の一番上の紙をひょいと裏返して宛先を見た。
「…隊長 嫌味ですか?」
「いや 俺が行きたくないから押しつけ。」
さらりとそんな事を言って部下に物事を押しつける自らの上司をとりあえず睨みつけてから 態とらしく はぁと深い溜息を態とらしくついて書類の束を抱え込んだ。
「…行ってきまぁーす…。」
「おー。」
ただでさえ書類が重いのに と松本は内心毒づいた。
その宛先のせいで余計足が重く感じてしまうではないか。嗚呼 今日は厄日だわと 日が昇って早々に松本は思わざる得なかった。
「十番隊副官 松本乱菊でェす。失礼してもよろしいでしょうか?」
形式に則った けれども一部間延びした挨拶をして返事を待ったが 声は一向に聞こえてきそうにはなかった。
首を傾げていると 顔を真っ青にした吉良が全力疾走をして通り過ぎようとしたので 松本はその裾を掴み呼び止めた。
「吉良 まさか市丸隊長居ないの?」
その声に吉良は顔をあげ 泣きそうな声をだした。
「松本さんも見てないのかい?」
何処に行ったんだよ と呟いている所を見ると 半端じゃない量の仕事がいつものように残っているのだろう。かける言葉も見つからず 少し目線を泳がしてから松本はご愁傷様と呟いた。
本当に今にも泣き出してしまいそうな声で 本当にと返した吉良が流石に可哀想になってくる。
「…仕方無いわねぇ…」
「え?」
「手伝ってあげる っつってるの。」
そう言って松本は手に抱えていた書類の束を吉良に押しつけて持たせ ふーっと息を吐き出しながら髪の毛をかきあげた。
「その書類 今すぐ判貰わないといけないのがあるの。」
「あっ…有難う松本さん!」
どうやっても泣き出しそうな吉良に苦笑してから さてと松本は顔を上げた。
何処に居るかな 「市丸隊長」は と くるりと周りを見回した後に 松本は態とらしく溜息をついた。
「あれ?」
「…何しに来た市丸。」
呆れたように日番谷は顔を上げて そこに居る男を軽く睨んだ。
「書類不備でもあったか?」
先程松本が運んだ書類の事かと 日番谷は声をかけた。が 市丸は何のコト?と首を傾げてみせた。
「何 十番隊副隊長はん おらへんの?」
「…お前に渡す書類を持って お前のトコに行った筈だけど」
「ええ?困ったなぁ…そらどうも」
ああ と肩を落として帰っていく市丸の背中を見ながら 日番谷は小さく すれ違いか・と呟いた。
求め合っているはずなのに
僕らは
いつまでたっても すれ違い。
それが甘美な感情であるという事を気付いたのはいつ頃だったろうか。
気付いて直ぐに 直感的に感じた。
−気付いては いけない事だった。
だから そっとしまった。
お互い様 でしょう?
瀞霊廷内を一周したのではないかと思ったあたりで ゆらりと揺れる 自分の隊長とは違ってさらさらとしている銀色の髪が視界に入った。
まったく あたしに手間かけさせて。頬の一つでも抓ってやろうかしら と思って一歩踏み出すと 彼もこちらに気付いたようで 目が合った。
次に何を言おうかなんて考えずに 二人はほぼ同時に口を開いた。
「「見ぃ付けた」」
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::後書::
ギン乱はどうも 物語なのか独白なのか微妙なラインになってしまう…。
結局最後はラブラブでも それはそれで好きです。
結局最後は離ればなれでも それはそれでまた良い。
そんな感じで。(?)