差し込む光を払いのけようと手を動かす。そしてそれは 当然の如く空を切る。
 何時も通りの 全く持ってうざったい朝が来た と 誰にでもなく胸中で毒付いた。

「あー…集会やばいかも。」

 布団から身体を出せずに小さくうずくまりながらも そんな事を呟く。
 そろそろ遅刻する…そう解っていても出れないものは出れないのだけれども そうそう我が侭ばかりを言ってもいられないので のろのろと布団からはいずり出た。

 ごしりと目を擦ると 一瞬世界が白くなってからじわじわと色を取り戻し始めた。

 だらだらと無駄に時間をかけて着替えをする。些か頭の靄がとれてきた頃に着替えが終わった。
 襖を開けると冷たい空気が流れ込む。

「あ。」

 知り過ぎた 霊圧を感じて 足を一歩廊下へと踏み出した。
 気持ちの良い風が 頬を掠めてゆく。

 そうして毎日 唐突に理解するのだ。



−朝が 来た と。



 ちらりと向こう側に黒いものが見える。
 それは一度首を傾げてから 右手をあげてぶんぶんと振ってくる。

「日番谷君っ!おはようっ!」

 そう この台詞で



−今日が 始まる



「おー。」

 やる気の無い声は向こうに届いたかどうかすら曖昧なのだけれども 確認をとろうとは思わなかった。少しだけ足を早め 彼女の方へと歩みを進める。

「日番谷君も集会遅刻だねーっ」

 仲間が増えたと言わんばかりに笑顔に にやりと笑って返事を返してみせた。

「俺はお前と違って何十回もしてねェから良いんだよ。」

 もう 可愛くない!と いつものようなお怒りの台詞に肩をすくめて反応してみせた。

 可愛くても困るのだけれども。

 脱弟は長い話のようだから その言葉は心の奥底にしまっておく事にした。
 いつか 言える日が来るように。

「気持ち良い朝。」

 目を細めて空を見上げる彼女の横顔をぼぅっと見る。



 現世の生を終えた時。
 あの時のような 朝が来ない日が これから二度と無いように。

 何度でも 何時までも 言いつづける。



 おはよう。




 君がその言葉を口にするから
 新しい一日が 朝を迎えるんだ。











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