きみの呼吸の音を聞こう。
 優しい呼吸の音を聞こう。

 きみが生きていると
 その音が 教えてくれるから。


 目から流れ落ちた一筋の涙を拭った。

(泣かないって、決めたのに)

 莫迦みたいだな、と 日番谷は自嘲した。


 君との距離は1メートル。
 ボクは手を触れようともしない。

 君との距離は1メートル。
 ボクは手を触れることすら出来ない。

 でも

 感じてるよ きみの呼吸を。
 感じてるよ きみが生きているということを。


「隊長ー。行きますよォ」

 間延びした松本の声に 日番谷は ああ、と返事を返した。

「行って、くるな。」

 1メートル先の彼女に届く程度の声で日番谷は囁いた。
 無い返事に ズキリとした胸を抑えて踵を返した。



 君が幸せになれるならば ボクは何だってしよう。



(行って、くるな。)

 声に出さず 空を見上げ日番谷はもう一度繰り返した。






 彼女の指が微かに動いた事に気付きもせずに。