血だらけの視界の中で、君が溺れている。
 ゾッとする景色の中、這いつくばってそれでもなお冷静な自分がいた。

(…夢?)

 そう問う俺に、俺自身が残酷にそれを否定した。

(目を逸らすな。)

 なんて冷酷な台詞だろう。
 目を閉ざすことすら許してくれない。

 血がこびり付いた喉を震わして声を絞り出す。


「う そ、だ。」


 情けの無い、掠れた声。
 嘘だ、嘘だ、嘘だ。その言葉だけがエンドレスリピートされる。
 嘘だ、ありえる筈がない。

(誓ったのに。)

 かぁっと目頭が痛みを伴い熱くなる。

(もう傷つけないって)

 何時しかの情景がリアルに蘇る。血だらけで伏せる君。笑う男。
 そう、あの時誓った筈だった。
 両手で抱えて離しはしないと。



 もう二度と、君を失いはしないと。





「…な…も…りぃっ…!」




 擦れてた声は誰にも届かず、空へと吸い込まれていった。









 俺はただ、君の笑顔が見たいだけなのに。









::後書::

ややこしくしすぎた感がヒシヒシと…。
未来のいつかの話です。