狂い掛けた欲望だった。
 だだそれだけを望んでいた。
 他のものなど、何もいらなかった。

 そう

 世界の誰が不幸だろうと、幸せだろうと

 君が、幸せならば。

 ただそれだけで、俺は世界中の不幸を背負って死ねるのに。

 君が幸せである。
 君が笑う。

 それだけが重要で、それだけが俺の全てなんだ。
 そう、それだけが…。




 目がさめたときに、頬に違和感を感じて手の甲で擦った。
 それが涙であると気付くまでは時間がかかった。
 涙など何十年ぶりだろうか。そう思うと、何故だか笑いがこみ上げてきた。
 莫迦らしい。そう自嘲して体を起こすと、冷たい風が頬に当たった。

 全てが零に戻れるならば

 全てが零に戻ってしまうならば。

 俺は、何ができるだろうか。

 零れてしまった、ゼロ。



 イカレた世界は、元に戻るのだろうか。
 もう11月に差し掛かるというのに、昼間の日差しは、酷く暑かった。

 じっとりと、背中にまとわりつく汗が、酷く不快だった。








::後書::

あんまりお題が関係ない。