本誌「事件」後イメージの捏造作品。
どの事件かはご想像にお任せ致します。
許して下さる方のみ スクロールでお願い致します。
人の為に祈る事すらも 神は欲と呼ぶのだろうか。
彼女が幸せになるようにと 祈る事すら神は許してはくれないのだろうか。
祈りが 届くならば。
そう祈り出したら
神の居ない灰色に染め上げられた空が 戯けたように笑った。
「日番谷君!」
半幅悲鳴に近いような声で目が覚める。蒼い空が広がっていたのが悔しかった。
「あぁ 何だよ?」
屋根の上で寝そべっていた日番谷は上半身をあげた。雛森は屋根づたいに 危なっかしい動きをしながらこちらへと近づいている。まだ遠い。
「何だよ じゃないでしょ!乱菊さんが困ってるんだよっ!」
雛森は あの事件以来色彩を失った。
四番隊によると 目の神経には異常がないから ショックのせいらしい。
回復しないかもしれない。
回復するかもしれない。
少なくとも 0%では無い事に日番谷がどれだけ安堵を覚えたかご想像頂けるだろうか。
「もぅ 日番谷く…」
かくん と 声が 下に落ちた。
「ひっ…」
急に足場を無くした事で一瞬頭が真っ白になる。
悲鳴を上げるために息を吸い込んだ所で終わった。
「莫迦」
霊子を足下で固め 宙に立つ日番谷にお姫様だっこのような格好で受け止められる。
「ひ 日番谷く…。」
「お前なァ…。」
呆れたようにそこまで言うと 雛森は頬を紅潮させて訴えてくる。
「あのね 白黒だと上手く遠近感が掴めないのっ!ほ ホントだよっ?」
「そうでなくても落ちたんじゃねぇの?」
けたけたと笑うと 雛森は頬をめいいっぱい膨らませて否定の意を示した。
たん と 霊子の床を蹴り先程まで居た屋根の上へと戻る。
優しく降ろされると 雛森は本当だよともう一度訴えた。
はいはいと生返事をして またごろんと屋根瓦の上に横になった。
「日番谷君 だから乱菊さんが怒って…」
隣にしゃがみ込もうと足を折り畳む雛森の腕を強く引くと 重力に逆らわず落ちて来た。
「ふぁっ?!」
日番谷の腹の辺りに倒れ込む姿になり さらに雛森の背中に腕を回して動かないようにさせる。
「ちょ ちょっと日番谷君!」
ぽすぽすと間抜けな音を立てながら雛森が日番谷の腹を叩く。勿論効果などあるわけがない。
「勝手に怒らせとけよ。」
「あのね そんな訳には…」
いかないでしょう。
そう続くであろう雛森の台詞が唐突に切れたので 何があったのかと訝しげに日番谷が顔をのぞき込んだ。
「雛森?」
「…日番谷君…ぎ…銀…色…」
「は?」
いきなり雛森の腕が日番谷の髪の毛へと素早く伸びた。雛森に覆い被さられるようになり 日番谷は反応も出来ずに 唖然とするだけだった。
「ひ…ひなも り?」
ぽつん と 日番谷の頬に水が落ちた。
「銀色…だ…」
雛森?そうもう一度呼び返し 真上の彼女の顔を見てやっと先の水の正体を知った。
「銀色だ…は…灰色じゃ…ないっ……!日番谷君のっ…髪の 色だぁっ…!」
色が
戻った?
「雛森…お前…まさか…!」
その期待を裏切るように雛森は首を振った。
「銀色だけ。銀色だけ…日番谷君の 髪の色だけ…。」
でも
「嬉しいっ…!」
其れが一色であろうとも
他の人には判別出来ない灰色と銀色の差であろうとも
其れが回復の兆しである事は間違いなく。
ぱらぱらと上から落ちてくる涙で 日番谷の頬が先より余計濡れた。
神よ
祈り 届くなら。
神が其処に居るのか 教えてくれ。
蒼い空が 嘲るように微笑んだ。
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