「飛梅」の口調捏造。
神様
神様
今日も 空が見えません。
薄暗い天井が 真っ先に視界に入る。
次から次へと涙が溢れ出してくる。
なかなか 乾かないなぁ…。
そう思えば思うほど 止まらなかった。
枕元に置かれた 几帳面に畳まれたハンカチと瓶に入った飲み薬。其処に残る残り香が解る自分が余計に辛かった。
そっと結界に触れると残る温もり。
温かい
温かすぎる。優し過ぎる。
いっそのこと 全てがこの身体を裂く程冷たければ良いのに。
「あったか…過ぎ…る…よぉっ…」
布団に水玉模様が微かに出来る。それから目を背けるように 結界に触れる指に力を入れる。
ぱき ん
簡単に脆く壊れる結界に ほんの少しだけ救われた気がした。もしもこれがなかなか壊れてくれなければ 揺らいでいたかもしれなかった…。
代わりに己の周りに纏った結界が やけに冷たい気がしてならなかった。
『桃』
呼ぶ声に 小さく返事を返す。
「…飛 梅。」
『あの人 斬るの?』
ぐらりと揺れる決意を感じ 自分に言い聞かせるように強く返す。
「藍染隊長を殺した人よ?…斬る。」
強く口に出した筈の最後の単語は少し上擦って耳に入った。…そう 斬るのだ。斬る 斬る 斬る…。
『無理って知ってるくせに?…あたし…あの人 斬りたくない。』
そういう彼女が好きだった。刀のくせに 斬る事を怖がる飛梅に出会えた時 ああ これが私の斬魄刀で良かったと安堵したのを覚えている。
けれども
何故 今。
「飛梅 何言ってるの…?」
返事は返ってこない。
「飛梅?」
それでもやはり 返ってこない。
斬るのだ
誰に 何と言われようとも。
例え
己自信に 何を言われようとも。
上を見上げると やはり天井しか無かった。
神様 神様
あたしには今日も
天井しか 見えません。
神様 神様
あたしは
いつになったら
飛べ ますか?
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