血だらけの自分の手の平を見て 思わず笑いがこみ上げてきた。
莫迦だ。莫迦としか言い様が無い。
よろけながらも それでも立っている自分に よくやるよと自嘲した。
「何…っ…何なのっ…?!」
声にならない悲鳴の後の 彼女の問いに思わず笑い返した。
滑稽だ。
ざわりざわりと周りがざわめき始めた。数人はもう 黒の使者の名を思いついている頃だろう。
もうそろそろ二波目が来るなと 冷静に考えている自分が更に可笑しかった。
三波目が 最期だ。
時計など見なくても正確な時間ぐらい解る。
もう時間が無い事は明白だった。
「…残念です。」
そっと触れた頬は血の気が失せてはいたけれども それでもぬくもりがあった。
愛しい
浮かんだ単語を直ぐに振り払ったけれども 始めて感じる感情である事を偽ることは出来そうにもなかった。
「12時の鐘が 響いてしまう。」
重い音を鳴らす12時の鐘が 鳴り響いた。
近くの窓を蹴り壊して飛び降りる。何十と仕事をこなす度にした一連の動作は 毒で体が重くても軽やかにすることが出来た。
どすんと 道路側に止っているオープンカーの後部座席に体を丸めて着地した。
凍てつくような空気が呼吸をする度に喉に刺さった。
運転席から飛んできたモノを条件反射でキャッチすると その小ビンには黒いラベルに白の髑髏が描かれていた。
何も問うことはなくそれを飲み干した。
じわぁっと苦い味が広がってゆく。
「…其処に居るのは 『赤』 か?」
「ああ。」
「間に合うか。」
運転席の方へ問うと 『赤』は肩を竦めてみせた。
「あの人の作品だ 時間に狂いはない。あと10秒後生きてたら解毒成功。」
「…そうか。」
冷静なフリをしておきながらも『赤』の声が震えているのは解った。
全くもって人の心配ばかりするお人よしだ。
何時しかの罰則以来人を殺す任務には就いていない。本人もそれを望んでいる。
そっと目を瞑る。
「もし死んだら 向こうで踊りましょうと。」
伝えてくれ。その意味を含んでいたのを 『赤』はきちんと掬い取ってくれた。
「てめェで伝えろ 莫迦。」
彼らしい返答に くっと喉を鳴らした。
10秒。
「…生きてるか?」
阿散井の問いに答えなかった。
「『黒』?おい く……」
体が重い。
其処で世界が真っ黒になった。
+『One decision.』+
+戻+
::後書::
この物語が何処へ進もうとしているのか誰か教えてください。(涙)
あえて説明は書かなかった…もとい入れられなかったですが
『赤』や『黒』は使者内の呼び名です。
もしも僕が死んだなら