011.酔い
「…雛森。」
「だからねェ」
「…ひなも」
「日番谷君ねぇ」
「…ひな…」
「あれから一度も言ってくれないの。」
「ひ」
「好き って 言って?」
あんなこっ恥ずかしい台詞 二度も言えとお前は言うのかよ?
酔っ払いには 暫く勝てそうにもなさそうだった。
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012.的中
「無理だって。」
そう 雛森は苦笑気味に日番谷を止めた。
「何で?」
「日番谷君 射的なんてやった事ないでしょ?」
あたしの方がまだ上手いよ。そう頬を膨らませて言う雛森の手から銃を奪い ぬいぐるみに焦点を当てた。
「良いから黙ってろって。」
ぱん という勢いの良い音の後に そのぬいぐるみがぽすんと倒れた。
「な?的中。」
年齢相応の自慢気な笑みを浮かべて 日番谷はそのぬいぐるみを指した。
自分より日番谷の方が射的が上手かったコトも悔しかったけれども それ以上に日番谷のその笑みにドキドキしている自分が悔しくて 雛森は頬をめいいっぱい膨らましてそっぽを向いてみせた。
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013.レンズ
レンズを通して見たら
貴方はもう少しぐらい ハッキリ見えますか?
「見えない?」
「見える けど。」
けど ハッキリ しないの。
虚ろな目が訴えた。
日番谷は眠いのだろうと適当に理由を決めて 優しく目を手で覆った。
「見えなくても 感じるだろ?」
−此処に 居る と。
やっぱりまだ あたしにはレンズは必要無いみたい。
そう言って 雛森は笑った。
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014.天体
あの日の星空は、一体何処に行ったのだろうか。
あの日紅く輝いていた月は、一体何処に行ったのだろうか。
見上げる空は、一面の雲。
取り払えないけれど、取り払う為に手を伸ばしたんだ。
せいいっぱいの背伸びをして。
見せておくれ、
あの日の星空を
あの日の月を
あの日の太陽を
あの日の、君を。
叫んだ言葉は、彼女の名前。
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015.上を向いて
涙が止らないときは、上を向いていればいい。
例え涙が溢れてこようとも、上を向きつづければいい。
そうすれば、いつか涙は止るであろうから。
そう、呪文のように自分に言い聞かせてきたのに。
なのに、君は両手を広げた。
少しだけ、首をかしげて。
「おいで。」
気付けば、縋り付いて泣いていた。
下を向いて、泣いていた。