051.ぬいぐるみ
「なぁに これ」
「やる」
「や やるったってシロちゃ…」
「いいから!」
押しつけられたシロクマの縫いぐるみを 雛森は困った顔で受け取った。
「こんなの 何処で手に入れて…」
「誕生日!」
遮るような台詞に きょとんと雛森は目を丸くした。
「おめでとう っつってんだよ!」
そのくらい解れ と 怒鳴られて 雛森は解るわけ無いじゃないと 嬉しそうにクスクス笑った。
![]()
052.手紙
(パラレルネタ注意)
君へと繋がる言葉を綴ろう。
Love letter
愛の言葉を。
不器用な文字で、不器用な言葉遣いで。
でも、沢山の思いを込めて。
今度帰れる日の日付と時間。そして、小さく右下に愛の言葉を。
次に会える日を 信じてる。
![]()
053.石
お前が望むなら 俺はモノ言わぬ石になろう
お前の足元を支える
お前の進む道に散らばる 石になろう
でも でもどうか忘れないで
それは お前が望んだらの話。
お前がその望みを口にしないのならば
俺は君を傷つける言葉だって吐くし
お前を慰める言葉だって口にする。
でも でもどうか忘れないで
君が望むか望まないかには関わりなく
俺は お前を守る。
![]()
054.うた
うたを うたおう。
声を張り上げて
喉が枯れるぐらい
うたを うたおう。
君に 愛の歌を。
「綺麗だよね 日番谷君の声。」
「…あんまり歌うのはスキじゃない。」
「ええ 何でー?」
「喉痛い。声高い。注目されるの嫌い。」
「ええー!すごく綺麗だよー!」
「…お前の 声の方が好き。」
だから歌え。
そんな良く分からない我が侭を 雛森はくすりと笑って了承した。
![]()
055.木
大きな木だった。
名前もしらない木。
集落の中心に 家に囲まれるようにして立っていた木。
君と 雨宿りした木。
懐かしさに触れてみた。
少し指に力を入れると ぱりぱりと表面が剥がれ落ちてゆくのに 脆くなったな と 苦笑した。
身軽に枝に飛び乗ると 流石にぎしりとあまり穏やかでない音がした。
枝の部分はまだ若そうで 幹よりかは十分つるつるしていた。
うん 懐かしいな
そんなことを考えていると 何かのくぼみに指先があたった。
ふと覗き込むと そこにはたどたどしい子供の字で
小さな小さな 相合傘。
懐かしさに ほんの少しだけ世界が揺らいだ。
戦いを知らぬ世にはもう戻れないのだろうと。
けれども 今を生きようと。
傘の中に入っていた名前に 思わず頬が赤らんでしまったとか そんなことは置いておいて。