081.ピアス
※パラレル注意
「絶対死んでも穴は開けない。」
真顔で言う日番谷に、思わず雛森は噴き出してしまった。
何処からどう見ても不良な日番谷がそのような発言をするのは、何となく不釣り合いな気がした。
「何で?」
笑いを堪えながら聞くと、日番谷は機嫌を損ねたように口を尖らして答えた。
「痛いだろ。」
喧嘩はするくせに、と笑うと、それとコレは別だ、と返された。
一体何が別なのか、雛森には良く分からなかったが、そういうことにしてあげた。
082.メイク
ヒトに不可能は無い。
唖然としながら日番谷はそう考えた。
前に立っている舞子の衣装を着た女が、幼い頃から知っている雛森桃とは到底思えなかった。
「変…かな?」
長い睫から、彼女が上目使いにこちらを見た。
不覚にもときめいてしまった自分が恥ずかしくて、日番谷は目を反らした。
「馬子にも衣装、じゃねぇの?」
照れ隠しに、そうぶっきらぼうに答えた。
083.髪を切る
※雛森意識戻り注意
昔から、不思議と女性が髪を切るという行為は特別視されやすい。
長い髪は、何かを背負っているように見えるからだろうか。
さっぱりとしたな。
そんな事を言おうと思ったのに、うまく言葉にならなかった。
背負ったものを降ろす為に髪を切ったのではなく
新たに背負う為に髪を切ったのだ。
そう、感じさせられて。
無力が悔しくて
悔しいぐらい、君が清々しくて。
084.買い物
「…こんなに買うのか?」
呆れたような日番谷の声に、雛森は些かショックを受けたように顔を歪ませた。
「日番谷君に選んでもらう為に持ってきたの!話聞いてた?」
そんな事を聞いた覚えは全く無く、変わりに延々と考え事をしていたという記憶が残っていた。
「え、あ、あぁ、そうか…。」
何となく申し訳無くて、そうどもりながら言うと、彼女は藍色の着物と桃色の着物を差し出した。
「ね、どっちがイイとおもう?」
「…俺、藍染の好みとかわかんねぇけど」
ぶすっとした口調でそういう日番谷に、雛森はきょとんとした顔をした。
「…何で?」
「は?」
「ぜんっぜん話聞いてなかったのっ?!日番谷君との今度のデートの為に買うのにっ!」
頬が些か熱くなる事を感じながら、日番谷は自分に毒づいた。
(…この、単純野郎め)
そんな彼に選ばれたのは、桃色の着物だった。
085.タトゥ
それは刻み込まれた烙印
さぁ、焼き尽くしておくれ
俺のこの心臓の上に
君の心の烙印を
さぁ、躊躇いなど脱ぎ捨てて
僕らの誓いを立てようぞ