106.光
あまりにも眩しくて、ボクは思わず目を閉じた。
キミはボクには眩しすぎた。
それでも笑っていてください
キミになら、両目を潰されたって構わないから。
102.闇
飲み込まれてしまいそうな闇が怖くて、走り出した。
途切れない闇。
ここは何処。
誰か、助けて。
涙が浮かんだ。
怖かった。
このまま、肌を刺す冷たい空気に貫かれて死んでしまうのではないだろうかと。
嫌な想像ばかり頭を巡る。
怖い。怖い。
(助けて、シロちゃん)
叫びたくても声が出なかった。
呼べば必ず返事を寄越してくれる彼が居ない事を自覚するのは辛かった。
(嫌)
カラカラの喉に冷たい風が滑り込む。
(返事をして、あたしの名前を呼んでよ、何処に居るの−)
彼の顔がぐるぐる回る。誰よりも彼の声が聞きたかった。
左手の塀の上で、何かが動く音がした。
「泣いてんじゃねーよ、莫迦桃。」
一番聞きたかった、声だった。
108.誰?
「誰?」
「酷。」
雛森は思わず呆れた声を出した。
それもそうだろう。
開いたアルバムに並ぶ40人近くの顔の中に彼の記憶に残された顔は三つ程度しか無いのだから。
「学年違うヤツまで全員覚えてるオマエが怖いっつーの。」
「何で忘れるかなぁ。」
理解出来ないという顔で雛森は首を傾げた。
日番谷だって、自分の隊員ぐらいはきちんと覚えている。入隊初日に覚えきったりもする程だ。
つまり、覚える事が元来苦手なわけでは無い筈だ。
「変なの。」
「覚える必要が無かったから。」
ぶっきらぼうに答えた日番谷に、雛森は少し拗ねた目を向けた。
「何それ〜?酷いじゃんっ!」
ぷぅと頬を膨らませて口を尖らす雛森の頬を押して空気を抜きながら日番谷は苦笑いをした。
「お前の隣に行く事しか、頭になかったからな。」
ぽん、という音が聞こえそうな程、雛森の顔が一気に真っ赤になった。
109.クチビルノスルコトハ
「日番谷君のバカ」
拗ねるように言う君の声が響く。
「あり得ない。何で、あんなトコで」
怒った口調も頬が赤ければ説得力も半減だ。
「誰が見てるか、わかんな」
途切れる君の台詞。
趣味が悪いと云われるかもしれないが、支配しているようで気分が良い。
キミとボクの唇のする事は、ただヒトツ。
110.セピア
ホントは
キライじゃなかったんだ、そのメロディ。
セピア色の思い出に埋もれた灰色のメロディ。
もう、思い出せないけど。
キミみたいだったから
スキ、っていうのが、恥ずかしかったんだ。
ホントは、キライじゃなかったんだ。
セピア色のキミが子守歌代わりに歌ってくれた、あの歌が。