126.鳥
愛しているという言葉の重みで、飛べなくなった仔鳥が木の上に居た。
零れた宝石を拾い集めて、涙を隠してた。
泣いてもいいよと、木の下の仔犬は云えなかった。
ごめんね、臆病で。
伏せる仔鳥の人形の隣で、仔犬は泣いた。
次に巡り会えたなら、僕は必ず伝えるよと。
「泣いても、いいんだよ。」
127.カップ
日番谷は、目の前に置かれたそのマグカップと呼ばれるものを穴が空くほど凝視した。
一体コレはどういうことなのだろうか。
茶を煎れようと台所に来たら、こんなものが置かれていたのだ。
それも何故だか湯飲みが一つ残らず消えている。
それよりも不可解なのが、カップに描かれている絵らしきものだ。
「…タヌキ?…いや…ネズミ…じゃないよな…クマ?」
一体何なのかさっぱり解らない。
そうやって日番谷が一人首を捻っている頃、雛森はスキップで嬉しそうに廊下を歩いていた。
今頃日番谷がお茶を煎れに台所に行って、マグカップを発見している頃だろう。
「日番谷君、気に入ってくれるかなぁ、あのレッサーパンダのマグカップ!」
128.渦
巻き込まれる。
溺れる。
息が、出来ない。
(誰か)
だれか、タスケテ。
叫ぼうとすればする程、水が喉を通り胃へと押し込まれてゆく。
ふと、その時手が伸びてきた。
それを必死に掴まえる。
ああ、そうか。ふと納得する。
いつも、いつだってそうだったのだ。
(日番谷君が、助けてくれたんだ)
気付けば目は覚めていた。
129.角
次の角を曲がる。
何となく緊張して、身体が固くなる。
扉の前に描かれた十の文字に、一つ息を吸い込む。
普段当たり前に行っていた筈の部屋が、何故こうも特別に感じるのだろうか。
「日番谷君、入っていい?」
ああ、と返ってきた返事に扉を開ける。
どきん、どきんと、胸が高鳴った。
130.棘
ちくん、ちくん。
貴方を遠くで見付けるたびに、小さな棘がいくつも胸を刺す。
ちくん、ちくん。