166.脱出

 いい加減、逃げ出したかった。
 いい加減、それが許されると思っていた。

「…ごめん、忘れてくれ。」

 返事も聞かずに、俺はその場を逃げ去った。
 全力疾走、脱兎の如くとはまさにこのこと。
 あまりの情けなさに、悲しいかな、涙も出ない。

(畜生、畜生、畜生、畜生)




 恋をすることが、これほど痛いものだとは知らなかった。




187.泡

 ほら人魚姫
 しっかりそのナイフを握って。
 ほら人魚姫
 泡にならないうちに。

 俺の血で、体を洗って帰っていきな。

 ほら人魚姫。


 君が泡になるとこなんて、見たくないんだ。


168.罪

 愛することが罪だというなら
 恋することは罰だろう。

 こんな痛み、知るくらいなら、もう

(求めたくなんて、ない。)

 影でただ一方的に愛でているほうが、一体どれだけ楽だというのだろうか。


189.さよなら

 君が泣く姿なんて見たくない
 君が傷つく言葉なんて言いたくない


 君のさよならなんて、聞きたくない。


 我侭な僕の、最後の我侭。


170.泳ぐ

「いや。」

 即答第一声。解ってた。解ってはいたけれども…。
 思わずぐすっと鼻をすする。最近日番谷君、妙につれない。

「一日だけ、ね?海行って泳ごうよぉ」
「ヤーダ、っつったらヤ、な、の。」

 キッパリと拒否されて、あまりにも悔しいので、最近日番谷君冷たくなったよねと呟いたら、知るかとまたもや冷たい返事が返ってきた。
 …つれない。

「泳ごうよぉ、泳ぎたいよぉ〜!」
「知るか、一人で行け。」
「新しい水着買ったのにい…。」
「………。」
「折角乱菊さんと買いに行ったのに…。」
「………乱菊と行ったのか…。」
「ウン!ちょっと恥ずかしかったけど可愛いの買ってもらったんだよ!」
「…余計行くな。」
「えー?…もういいもん、阿散井君でも誘うもん…。」

 ダン、と勢いよく机を叩いて立ち上がったかと思ったら、日番谷君に物凄い形相で「行く」といわれた。
 相変わらず心の変わり目がよくわからないけど、嬉しかったので笑っておいた。










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