196.待ちぼうけ

「信じらんねえ。」

 諦めたように日番谷は溜息をついた。
 一体何時間待たせれば気が済むというのだ。
 もう、二度とデートの約束なんて、してやらねえ。そう何十回も思う癖に、

「ひつがやくーんっ!」

 息を切らせてこちらに走ってくる彼女を見たら、なんだが自分が待っていた時間などどうでもよくなってしまう。
 信じらんねえ、と日番谷はもう一度小さく呟いた。
 其の笑顔一つで、全ての事がどうでもよくなってしまう自分が、信じられなかった。


197.ファイター

 勝つことが重要なんじゃない。
 戦う事が重要なんだ。

 背を向けず
 前に刃を向けること。
 それだけが、大切なこと。

 そうすれば、

 君ハ僕ヲ忘レラレナイダロウ?


 例え僕が散ってしまったとしても。


198.カオス

 其処には確かに、世界があった。
 君と僕との

 世界が、あった。

 触れないで。
 もう二度と、この世界に。

 あたしと彼の世界に、二度と、踏み込まないで。

 それは子を守る獣の親のように毛を逆立て
 しかしそれよりもずっと利己的に

 其処に確かにあったものは

 キミと僕との、カオス・ワールド。


199.伝説の時代

 神がいて
 天使がいて
 悪魔がいた時代。

 その時代から、そう。

 僕は、君が好きだったんだろう。

 体に刻み込まれたのは、君への愛。


200.崩壊

 そうして
 たった二人の、世界が、崩れた。

「だから」

 俺は首を振った。
 やめろ、云うな、この世界のままでいい。

「あたしは」

 それでも、彼女は揺らがなかった。



「死神に、なる。」

 外の世界を、知ってしまった。










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