236.カモフラージュ
チョコレートの山の下の、さらに下。
いつも必ず、此処に有る。
カモフラージュのつもりなのだろうが、毎年一緒では意味がないことに気付いているのだろうか。
気付いているとすれば、策士である。
拾い上げたそれは、ピンクの包装紙に派手な花の飾りがついていた。
シンプルにしないのは、このチョコの山の中で目立たせないため。日番谷が絶対に拾い上げないため。
挟まれた差出人不明のメッセージカードに、わざと字を崩して書いたダイスキの文字。
放り入れたチョコレートは、案の定苦かった。
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237.夢破れて
「俺さ」
小さく情けなくつぶやいたその声は震えていた。
「強くなりたかったんだ。」
仰向けに寝転がった彼は、天井の一点を見つめつづけていた。
「強くなったじゃない。」
あたしよりも、ずっと。
その言葉を飲み込んで、彼女は彼の髪を撫でた。
「なれなかったよ。」
そっと彼女を引き寄せて口付けたその彼の唇は、悲しみの味がした。
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238.止まらない
「泣き虫桃。」
その言葉と共に、真っ赤になった口内の砂を吐き出した。
くすん、くすん。桃の啜り泣きはとまらない。
「泣くなよ。」
にらみつけるようにしてシロが言っても、変わらない。
結局雛森は家に帰っても、布団に入っても鼻をすすりつづけた。
次の日も、やっぱりシロを見たとたんに顔をくしゃくしゃにして涙を流し始める。
情けなかったし、悔しかったし、ほんの少しだけ、少しだけ悲しかった。
猫が近寄った時だけ、彼女はへらりと笑った。
猫に、なりたかった。
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239.ブーン
ブーン、ブーン。
煩い音が響く。
ブーン、ブーン。
寝れやしない。
うだるような暑さの中で、耳障りな音だけが響きつづけた。
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240.徹夜
「酷い隈。また寝られなかったの?」
苦笑いしながら、目のしたをなぞられた。
少し怖くて、目を細めた。
「大丈夫だよ、心配すんな。」
潤んだ瞳が、怖かった。