271.夏休み

 今年の夏休みは、三日間。
 去年の半日を思い出せばよくとれたものである。

 久方ぶりの私服に袖を通す。なんとまあ懐かしいものか…。思わず溜息がでる。
 ふと気付くと、少し裾が短かった。思わず頬が緩む。裾直しをしようか。いや、頼もうか。

 珍しく鼻歌なんて歌って、下駄をひっかける。

 待ち合わせ時間まで、あと20分。


272.ある朝目が覚めると

 腕の中に
 彼女がいなかった。

 そうして、ああ夢だったのだと気付いた。
 空の腕を抱きしめる。

 目なんて醒めなければよかった。

 夢想のなかで

 君を抱きしめていたかった。


273.汚れちまった

 真っ赤な手を差し出して。

「汚れちまった。」

 子供のように、彼はへへっと笑った。
 彼の真っ赤な目が、彼の強い悲しみを教えてくれた。

 帰れないと思った。

 きっと、あたしたちは、一生。


129.

 唇を耳によせて
 あなたの吐息の温もりを感じる

アイシテルヨ

 甘い甘いないしょ話。


275.落下

 おちてゆく

「なんで、こんなに、むずかしいのかな」

 ずるずると、確実に

「ただすきだって、それだけなのに」

 もう、自分では這いずり上がれない
 底無しの泥沼の底に向かって、着実に。










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