281.ありがとう
ありがとう
ありがとう
ありがとう
一万回のありがとうを貴方に捧げる。
そして
たった一回の
ごめんなさいを。
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282.ちょっとだけ傷ついた
お前なんて大っ嫌いだ
半月前の喧嘩のときに、飛び出た言葉。
すぐ後悔して謝ろうと思って逃げられて半月。
やっと捕まえた彼女が、腕の中に居る。
「ちょっとだけだよ、ほんのちょっとだけだよ」
慌てて取り繕いながら暴れる彼女を、押さえ付けるように腕に力を入れた。
「うん」
彼女の震えが、伝わった。
「…ちょっとだけ、……傷ついた。」
腕の中の彼女の涙が、胸に染み込んだ。
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283.時計
ティック、タック
普段ふとした時に時計の音に聴き入ってしまうことがしばしある。その音は精確、明確であるにもかかわらずとてつもなく脆いものであるように響く。
松本にたまたま零して狐と狼に全力で馬鹿にされて以来、誰にも言わなくなった。しかし、やはりふとした瞬間聴き入ってしまう。
ティック、タック
時間の流れが、今でも刻まれている。
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284.おかえり
おかえりなさい
そう言う君がいる
ただいま
そう言える僕がいる
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285.まなざし
まっすぐに見据えてくるその瞳から、思わず目をそらした。
睨み合いなら慣れているが、残念ながら見つめられることにはなれていない。
それでも目線はじぃとこちらに突き刺さっている。どうしたものか。
「…雛森」
呼びかけたものの、こっち見ないで、とは言いづらくて言葉を詰らせた。
ただでさえ大きい目を、さらにまん丸くして彼女が言う。
「なあに?」
さあて、どうしたものか。