301.銃
照準を合わせて、引き金を引く。
死神の仕事というのは、そうはいかない。
手にリアルに伝わってくる肉の触感。
目の前で飛び散る肉片と血液。強い鉄の匂いと、死の香り。
そうやって、心に負の感情を溜めていく代わりに、俺達は虚の罪を洗い流す。
ピストルでは立て替えのできないこの仕事。
仲間の命の証の十の字と、虚の罪の印のこの刀を背負って、俺はまた歩く。
この軽すぎる魂が何処かへ飛んでいかないように。
302.ファッション
一年間で、死覇装を身に纏っている時間というのは、換算したくもないとほうもない時間になる。
だから、こう、見慣れた其れではない私服を見ると、不覚にも、本当に不覚にも。
ちょっとだけ、可愛いなと思ってしまう。
とても不覚だ、と心の中で何十回と繰り返してしまった、休日の午後。
303.屋根裏
口に人差し指をあてて、しーっの合図。
強く引き寄せられた腕を頼りに、よじ登った暗い部屋。
怖い怖いモンスターが寝ているうちについにたどり着いた最後の部屋にあるのは財宝の数々。
顔を見合わせて笑う。
くだらない木像に、古本。開かれない分厚いアルバムに、使わなくなったスーツケース。
全てが宝物で、きらきらと輝いて見えたあの時間。
あの屋根裏部屋は、今はもう無い。
304.しばしのなぐさめ
どうか目よさめないでくれと祈った。
しばしの休息と、しばしの慰めを。
それまでにきっと、俺が全てを終わらせておくから。
それまではどうか、目を覚まさないで。
夢の中にしかきっと、君の慰めは残っていないから。
305.厳格なアナタ
への字だった口は真一文字に。
幼かったその両肩にのしかかるものは重く。
厳格なアナタがふとみせるその笑顔が少しでも見たくて
今日もあたしは声を張る。
「おはよう、日番谷君!」